国語史資料の連関

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1693-03-23

和字正濫鈔 巻五 和字正濫鈔 巻五 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 和字正濫鈔 巻五 - 国語史資料の連関 和字正濫鈔 巻五 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント



此國の俗にていはゞ「天」はもと平聲なるを。常に「天」といふ。是にて叶へり。「天地」・「天下」・「天子」・「天氣」なといふ時も同し。「天文冬」。又「天文の博士」などいふ時は・音便上聲なり。「天王」・「天女」・「天神」・「天台」、「天狗」なといふ時は去聲なり、此ふたつは中華には叶はす。只此國の習ひなり。平上去の三聲の樣、皆これに准らへて知へし。

和語にも平上去の三聲あり、一字假名にていはゞ、日ひ・樋ひ・火ひ。毛け・〓け・食け、二字假名、橋はし・端はし・箸はし。弦つる・鈞つる・鶴つる、此類にて心得へし。「木綿ゆふ」、「龍たつ」、「奥おく」、「市いち」、「雪ゆき」、かやうなるを入聲に准らふへき歟。「鴨かも」、是は平聲の輕なるに。「鴨河かもかは」、これは上聲。「鴨社かものやしろ」、是は去聲なり。つゞきによりて同し言もかく聲のかはるなり

和字正濫鈔卷五終