右、「ち」よりこなたの四もじ。都方の人の常にいふは。「ち」の濁りは「じ」となり。「つ」は「ず」となる。田舍の人のいふは。「じ」は「ぢ」となり。「ず」は「づ」となる。
「ぢ」と「づ」とは、あたりて鼻に入るやうにいはざればかなはず。都方の人は。心を著つれば。いつれもわけてよくいはる。田舍の人は。知てもおほく改たむる事あたはず。
但「ち」と「つ」との濁り。よくかなへむとすれば、なだらかならでわろく聞ゆるなり。心得へし。
此次にいはく。王《ワウ》往《ワウ》等の字。脣にあたらざれは、わうの假名に叶はず、常にいふは、「をう」のことし、「あう」と「をう」、「おう」は、おなじきゝなるへし