2011-06-13
■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(7)
單流斷句と複流斷句 斷句はその表す斷定に於ける意識の流の數に由つて之を單流、複流の二つに分ける。意識の流が徹頭徹尾一つであるものを單流ど云ひ、意識の流が一斷句の或る部分に於て二つ以上に分れてゐるものを複流といふ。例へば
はなやかなる月さしのぼれり。
思ふとち春の山べに打ち群れてそことも云はぬ族寢してしが。古今集
の樣なのは單流斷句で
人をも
あふことの絶えてしなくば中々に 怨みざらまし。 拾遺集
身をも
山はさけ
海はあせなむ 世なりとも君に二心我有らめやも。 金槐集
などの樣なのは複流斷句である。何處か對句になつてゐる處が有つて其れがその噺句の中で一度統一されてゐるものは皆複流である。