2011-03-21
■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね上(5)
又曰、五屬はもとより心えむたよりばかりに、かりにたてたり。かならすしもこと(異)あゆひにかはれるゆゑあるにあらず(註一)。さるゆゑに、[や]・[かな]・のたぐひ疑・咏(二)・願・にわかちていだせれども、もとよりおなじ詞なれば、歌によりては、こなたかなたに心かよひてみゆるもあり、是あゆひのことわり也、うたがふべからず。
又曰、屬・家・倫・身・隊・おの/\條をすべて(三)、條ごとに繼あゆひ(四)をすぶ。あるひは、條の心えひとつならぬをぱ、條の下に例(五)をたつ。例のさまひとつならぬをば、例の下に様(六)をたつ。
又曰、引歌は、八代にとれるうちに、三代をむねとす。かたき例をぱ十三代にもとり、猶有がたきをぱ、諸集おもひうるまゝにとれり。
註(一) 疑屬と咏屬と、相通ずることなどが多いのを指す。
(二) ながめとよむ。詠嘆の意。
(三) 例へば、五屬の一、禁屬の中に、何な・な何ぞ・等の各條が含まれること。'
(四) 助詞・助動詞・が、他の助詞・助動詞・に、重つたもの。例へば、[今はな行きそ]の[はな…そ]・[降りぬべし]の[ぬべし]・等。
(五)條の中の種類。
(六)例の中の小さな種類。