2009-02-08 2009-02-08 ■ [言語生活史]読んでお聞せな おとよ「オヤそりやア読本とやらだねえ。おろく「あゝ好文士伝と云ふ為永の新作だよ……おとよ「オヤ夫れじやア面白いねえ。姉さん私にも些と読んでお聞せな。おろく「あゝその代り読み賃に嘉喜餅でも焼くなら。おとよ「かき餅でも何でも焼くから。おろく「そしてお茶も拵へるのだよ。おとよ「オヤ大そう高い読賃だねへ。ホ丶丶丶丶 おろく「それだつて読むにやア息が切れるものを。そして当世《いき》な所やまた婀娜な所があると直きに身に引き比べて恍惚《のろけ》たがるから困るよ。それだから余程読賃を余計に為ないぢやア合はないね……(『処女七種』第二十五回) 前田愛「音読から黙読へ」『近代読者の成立』ツイートする