国語史資料の連関

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2007-09-22

古今集遠鏡例言 20 古今集遠鏡例言 20 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 古今集遠鏡例言 20 - 国語史資料の連関 古今集遠鏡例言 20 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

○あはれを、アヽハレと譯せる所多し、たとへば「あれにけりあはれいくよのやどなれや」を、何年ニナル家ヂャゾヤ、アヽハレキツウ荒タワイと譯せる類也、かくうつす故は、「あはれ」はもと歎息《ナゲ》く聲にて、すなはち今ノ世の人の歎息《ナゲキ》て、アアヨイ月ヂャ、アヽツライ事ヂャ、又ハレ見事ナ花ヂャ、ハレヨイ子《コ》ヂャなどいふ、このアヽとハレとを、つらねていふ辭なれば也、「あはれてふことをあまたにやらじとや云々」は、花を見る人の、アヽハレ見事ナといふ其詞を、あまたの櫻へやらじと也、「あはれてふことこそうたて世の中を云々」は、アヽハレオイトシヤト、人ノ云テクレル詞コソ云々也、大かたこれらにて心得べし、さてそれより轉《ウツ》りては、何事にまれ、アヽハレと歎息《ナゲ》かるゝ事の名ともなりて、あはれなりとも、あはれをしるしらぬなども、さま/゛\ひろくつかふ、そのたぐひのあはれは、アヽハレと思はるゝ事をさしていへるなれば、俗言には、たゞにアヽハレとはいはず、そは又その思へるすぢにしたがひて、別《コト》に譯言《ウツシコトバ》ある也、