2007-09-04
■ 古今集遠鏡例言 2
○うひまなびなどのためには、ちうさくは、いかにくはしくときたるも、物のあぢはひを、甘しからしと、人のかたるを聞たらむやうにて、詞のいきほひ、てにをはのはたらきなど、こまかなる趣にいたりては、猶たしかにはえあらねば、其事を今おのが心に思ふがごとは、さとりえがたき物なるを、さとびごとに譯《ウツ》したるは、たゞにみづからさ思ふにひとしくて、物の味を、みづからなめて、しれるがごとく、いにしへの雅言《ミヤビゴト》みな、おのがはらの内の物としなれゝば、一うたのこまかなる心ばへの、こよなくたしかにえらるゝことおほきぞかし、
「さとびごとに訳《うつ》したるは、たゞにみづからさ思ふにひとしくて、物の味を、みづからなめて、しれるがごとく、いにしへの雅言《みやびごと》みな、おのがはらの内の物としなれゝば、一うたのこまかなる心ばへの、こよなくたしかにえらるゝことおほきぞかし」isbn:9784003028025 p304