国語史資料の連関

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2007-08-02

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ISBN:4003111621

山の手の用語は多少違っていたろうが、芝居のように「しからば御免」とか「後刻|御意《ぎよい》を得るでござろう」といっていたものでもあるまい。私の家内《かない》の父は旗本であったが、自宅で自分のことを目下《めした》にいう時は「おいら」といって、目上には「わたくし」といったそうだ。「わたし」とか「あたし」とかいう言葉は他の者にも使わせなかったという。この「おいら」というのは、江戸文芸では女もいっており、家内の祖母はやはり「おいら」だったそうだが、これがごく軽く上品に出て、字面で感じるようにいかついことはなかったというから、巽《たつみ》の芸者の、あの読むといかにもあらっぽい、いけぞんざいな、(というこの「いけぞんざい」が既に明治語の部に属する)口のききかたも直《じか》にはもっと色気も味もあったのだろう。