2007-05-16
■ [江戸語]江戸は日本國の人の寄場(皇都午睡)
〔皇都午睡三編上〕
江戸は日本國の人の寄場にて、言葉も關八州の田舎在郷の訛をよせて、自然となりし物ゆゑ、江戸詞と云ては甚少なし、其内古風を守り、叮嚀の詞も有り、大體京攝の詞を詰て短かく云ならはせし也、京都にても上京と下京と少し宛の詞に變あり、大坂にても五畿内の寄詞にて、三郷に大同小異あり、安治川邊の者は、四國九州中國の詞に馴れ、上町玉造の者は、大和伊賀伊勢の詞に移り、堺の者は紀州和泉路の詞に通じ、天滿の者は丹波丹後の言葉も交るべし、遠國他境の人の開語のはかり兼るは、各生れ所の國言葉にて訛とはいふべからず、諸國の人を相人とする都會の者が、其國詞に付合て云を訛と云也、笑ふべきことにはあらず、凡三都の者ほど訛るものはなし、心を付て聞べし、
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