国語史資料の連関

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2007-03-14

本居宣長字音仮字用格』1 本居宣長『字音仮字用格』1 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 本居宣長『字音仮字用格』1 - 国語史資料の連関 本居宣長『字音仮字用格』1 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント


此書は、漢字音の假字を正さん為に著せり、凡其字音、此方に古より傳用るところ、漢呉の二あり、又是に、近世傳る唐音と云ものを加へては三つ也、此三の音の事は、予別に漢字三音考を著して委く辨せり、

さて此中に、彼唐音と云ものは、古来の傳に非ずして、世に普く用る者にも非れば、是をさしおきて、今はたヾ漢呉二音の假字を論辨す、

抑此字音の假字の常にまがひやすきは、多くは「う」と引音にあり、「あう」と「わう」と「おう」と混じ、「きゃう」と「きょう」と「けう」とまぎるる類也、然れども是をは其所属の韻により、又其入聲の字などにても分るヽことなるが、たヾ辨へがたきは、喉音三行【あいうえお。やいゆえよ。わゐうゑを】の差別にて、其いゐえゑおをの假字は、字音のみならず、御國言に於ても、後世多くは錯乱して、善く是を辨る人無して、数百年を經たり、然るに近世難波の契沖僧、始て是を考へ出し、和字正濫抄を著せるより、古の假字再び世に明らかになりぬるは、比類なき大功なり、その後復古学の道いよ/\開けて、古言の假字づかひにおきては、今は遺漏無きを、【近年出来たる古言梯、便りよき書也】字音の假字に至ては、未詳に考へ定めたるものなくして、喉音三行の假字は殊に明らかならず、故に今先此三行の義を辨ずること左の如し、