2006-05-23
■ [方言意識史]木津川計『上方の笑い 漫才と落語』
講談社現代新書716 1984.1.20発行(1986.8.1三刷による)p.57−
徳川の封建時代は、ことばの鎖国時代でもあった。テレビもラジオも汽車もない。居住知移動の自由も奪われ、国民の大半を占める農民は、先祖代々の墳墓の地に生まれ死んでいった。藩の境い目はまたことばの境界でもあったのだ。
明治の維新政府が推進した政策の大転換は多くあったが、中でも、近代的統一国家を構築するに、ことばの境界を爆破する必要に迫られたのである。
唸りを上げて進められる富国強兵政策だったから、軍隊制度は急速に整えられた。難関があった。鹿児島の上官と青森の部下が、戦闘のさなかに地のことばを投げ合ったらどうなるか。「・・であります」は山口弁が基調といわれるが、独特の軍隊用語が作られていった。