国語史資料の連関

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2006-03-30

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p57安藤正次編『国語の概説』昭和27年4月5日発行

大正八年、東北方言調査のため、安藤(正次)先生が文部省から山形の上の山へ出張されたことがある。そのとき、土地の故老が面白い話を先生に聞かせてくれた。それは、むかし新庄藩で土地の言語改良を思い立ち、江戸から先生を招いたことがあるが、その先生というのはうたい(謡曲)の先生であったというのである。ことばの改良にうたいの先生ないしうたいそのものを利用したということは、むかし東北の人と九州の人と話が通じないので、例の「さん候」式の文句(この「さん候」というのは「さに候」すなわち今日の「そうです」にあたることば)を使って話を通じたというのと好一対の面白い話で、それは方言標準語ということを考える上にも、ひじょうに示唆に富んだ有益な話である。というのは、方言の相異をこえて全国民の共通理解をもたらすことばを共通語とよぶとすれば、その共通語は文学語であるということを、面白い例話として、わたしたちにおしえてくれるものだからである。