国語史資料の連関

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2006-03-18

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 大正4年9月5日発行 丁未出版社 215頁〜219頁

九四 薩摩と仙台

 徳川時代には、正月三日の謡初(うたひぞめ)式を始として、謡曲は幕府及び諸藩の重い式楽となり、武家の嗜むべき一藝となってゐた。曽て、薩摩様と仙台様と縁組があった時に、両藩士の応対に互に言葉が通じ難かったので、謡曲の詞で対話をしたことが有ると聞く。

 (中略)

 発音の一斑と語法の大略との違ひを見ても、斯の如くである。況や単語の違ひも沢山あるのだから、薩摩と仙台との言葉が通じ難いはずである。之を通じるためには、必ず標準語が要る。前の話の場合においては、謡曲の詞を以て臨時の標準語としたのである。

(此書の増補版『国語の趣味と常識』日下部重太郎 大正11年9月25日発行 丁未出版社 215頁〜219頁 全く同じ)

(『国語百談』序文に「この書物に述べた所は明治三十年頃から折にふれて色々書いて置いた手控に基づいて居ます。そのうち前に雑誌「教育界」などに載せたのには更に修正を加へました。」)