国語史資料の連関

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1695-02-09

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一、今時家Zの暖簾(のんれん)鑑板(かんばん)其ノ外、此ノ比板行(はんかう)せし草紙物語等を見るに片言(かたこと)は中/\取ルにもたらず、能書悪筆共に此四音の假名違(ちがひ)甚ダ多し。縱ば「十(じふ)」を「ぢう」、「筋(すぢ)」を「すじ」、「數(かず)」を「かづ」、「水(みづ)」を「みず」と書たるがごとし。

「い・ゐ・ひ・を・お・ほ」等の假名は其音通ひ紛るる者なれば、文學なき人の誤まれる事はさも有ぬべし。古歌にも「遠山鳥の遲(をそ)櫻」とよみ、廻(くはい)文(ぶん)に「をしめどもつゐにいつもとゆくはるは」といヘる類、有レ是。假名違といひながらそれを許(ゆる)すかたも有リと見えたり。又韻學(ゐんがく)より是レをいはゞ、「あやわ」の三行は元同じく喉音にて其中の軽重(きゃうぢう)なれば三音の相通(さうつう)共謂(いひ)つべし。唯ダ此ノ四音の假名をば書キ通はし言ヒ違ふる事は、決(けっ)して有ルまじき也。