1693-03-18
■ 和字正濫鈔 巻五
哥に、「吉野なる」、「難波なる」なとよむは。「吉野にある」、「難波にある」なり。仁阿反、奈なれは、つゞめていへり。
萬葉に、「吉野在《ナル》」、「春日尓有《ナル》」とやうにかけり。「みもあれ見すもあれ」を。「みまれ見ずまれ」。「ともあれかくもあれ」を。「とまれかくまれ」なといふ類は。毛阿反末なり。「物にそ有ける」を「物にざりける」とよめるは、曾阿切左なり。「思ふといふ」を、「思ふてふ」。「まてといはゞ」を、「まてゝはゞ」なといふ類は。登以反、知なるを。知と天と通したるなり。
萬葉に國中《ウチ》を「くぬち」とよめるは、尓宇切、奴なり。雪消を「ゆきけ」とよめるは。幾江反、計なり。
かやうに、阿等の五韵の字、下にありて、上よりつゝく所に假名反あり。