2010-04-10
■ [学史]軽重(和字解)
○お於 是を「おくのお」といふ。一字の訓咽より出るおもきよみこゑの上の字ごとに、大の字と御の字付たる字、是おもきかななり。
○一字の訓とは、男雄尾御〓面、此類「おくのお」なり。是等の字上に有ても下に有ても。「お」の字書べし。「おもき重」「たかお高雄」、「まつのお滿尾」「かつお勝尾」「みのお箕面」「しづのお賤男」「みつのお水尾」「おはり尾張」などの類、下に有ても、「お」の字書べし。
○咽より出るおもきよみこゑの字とは、よみのかしらにも、こゑのかしらにも咽よりおもき音なり。何れも「おくのお」の字書べし。「おほやけ公」「おほし多」「おほけなく無及」「おふる生」「おほかみ狼」「おうな女」「おふ負老」「おほせ仰」「おぼしく思敷」「おほふ掩」「おほきまち正親町」「おうご擁護」「おう翁應」 此類咽より出るおもきかなには、「おくのお」の字用ゆべし。
○大の字御の字付たる文字は、「おほゐなり大」「おほよそ凡」「おほぎみ大君」「おほうち大内」「おまへ御前」「おほぢ祖父大父」「おほかた大形」「おとゞ大臣」「おまし御坐」「おほぬさ大麻」「おほんかみ御神」「おほゐ川大井川」「おほとか汪洋」「おほんべ御贄」 此類は皆「おくのお」の字書べし。是又咽より出るおもきこゑなり。右「中のを」、「おくのお」、用ひやうかくのことし。此外上にあるかなには、「中のを」、「おくのお」通用してもくるしからず。かならずかゝはるべからずと或先達のいへるよし聞傳へ侍る。まことにさもあるべきことなり。然るに先輩の人、「中のを」、「おくのお」、わかちなく用ゆる事かゝはりて其理明らかならす。まぎらはしくて後人のまよひとなる。大やう右にいへる理をもつてをして知るべし。理なきにしゐて定むるはひがことなるべし。
○凡「おくのお」の字下には書べからず。中にもかゝず。てにはには猶用ゆべからす。たゞし一字のよみは、中にも下にも「おくのお」の字を書べし。そのことすでに上に記。