国語史資料の連関

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2007-06-20

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随見随聞録 見聞子

京都府教育雑誌123号(明治35年7月20日

去る六月下旬に関西文庫協会の例会が開かれた節、席上の演話は京都大学教授理学博士山口鋭之助氏であった。氏は物理学専門の学者であるのに、此席へ来て談されたのは日本国語についての詳密な研究で、而も其の研究は少しも従来の斯道学者に聴かず、唯自己一人の物好きの上の研究であるといふに至っては聴者をして一驚せしめた。

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博士は又、邦語には時を現はすことがないといはれた。過去現在未来といふ分ちは邦語にない。タといふもラウといふも純粋に時を現はさずして作用を表はして居る。雨が降るダラウは未来といふよりも疑問を表はして居るのであると。湯浅半月氏は後に是を賛せられた。

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京都言葉の種々の考が出て、博士は僕の娘がこちらの学校へ来てから行かれますしられますなどラレマスといふ語を話す。それが耳にたってならぬが、思へば東京でもいふ語である。不思議でならぬから一晩とくと考へたに、果然思ひ当った。それは東京では中流以上の成人のいふ語で子供にはない、それが此地では子供がならって来ていふのだから可笑しいのであったと。

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句読点を補う)