2004-05-06
■ でんしんの語(石井研堂・明治事物起原・人事部)
明治五年十月『雑誌』第六十六号に、「一洋人某、客に謂て曰く、余窃かに察するに、日本開化の盛、実に五大洲第一等なるべしと、客之を訝る、洋人冷笑して曰く貴国官途電線の縦横網羅する世界曾て見ざる所なり、余之を以て、全国の開化を推す」と、笑話を掲げしを見れば、官界情実のでんしんといふ語は、当時すでに行はれをりしなるべし。
免官 (太平楽府)
電信柱折面如v灰、空見2辞令1独傷哀、可v思世間正直者、昨之友達今不v来、
身の為めに蜘蛛も電線処々に張り 失名氏
七年五月刊『高見沢繁昌記』に、「某昨日官ヲ免ズ、全ク電気線ノ切断セシニ因ルト」、また十四年刊『東産』に「第一僕等は電信は無し……取所の無い男だが、エレキの引力は、実に恐ろしい……御同様も早くいゝ電信をつかまいて」など、仕官のことに、電信エレキの語を数ケ所使へり。
明治四年三月、各庁に令し、官吏濫挙の弊を清めしむ。当時すでに、官界に濫挙の弊発達したればなり。
大正版
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