2002-02-14
■ [和訓栞]和訓栞大綱(45)
○倭語清濁によりて氷炭相反するものあり たとへはみしは見き也しときと通へり しを濁れは不見也 ざり反し也 みすハ見る也 すとると通へり すを濁れバ不v見也 ざる反ず也 みてハ見たれの急語也 たれ反て也 てを濁れは不見ての義也 されは古今集のねても見ゆねでも見えけりの歌を下のねてもは不寐の義と先輩も釋せられたれはて文字濁りよまざれハ通しかねし又
庭の雪に我跡つけて出にしをとはれにけりと人や見るらむ
のうた てもじハもじ濁りよめは狂歌となるといひ
我こゝろなくさめかねつ更科やおは捨山にてる月をみて
此歌もとまりのて文字を濁り唱ふれは盲人の歌となるといへるか如し よく分辨すへきにこそ 著聞集にも蒔繪師か文に こもちまきかけてと書しは御物蒔かけの義なるを子持|娶《マギ》かけの義とよみて狼藉の詞となりしを假名はよみなしといふ事誠にをかしき事也 といへり 西土にもよみちがへしことを讀別字といへり 白字とも見ゆ 又本濁あり新濁あり本濁はもとより濁るへきをいふ也 新濁ハ音便によりて濁る事あるをいふ也