2006-11-09
■ 漱石の略語(金田一春彦)
田辺尚雄教授の『明治音楽物語』は、明治時代の音楽風俗を書いた本で、興昧深い題材を豊富に集め、達意の文章でつづった読みものであるが、中に一高時代の漱石教授の授業の思い出を書いたところがある。それによると、漱石は授業の時間にも次々と妙な単語を新作して生徒をけむに巻いたそうで、「牛耳をとる」を、「牛耳る」とつめ、「野次をとばす」ことを「野次る」と言ったりするのは、漱石がはじまりらしい。(12/9)
日本語を反省してみませんか (角川oneテーマ21 (B-17))
- 作者: 金田一春彦
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田辺尚雄氏の本に『明治音楽館』というのがある。これは明治時代の音楽風俗について書かれたものだが、この中で、一高時代の漱石教授の授業の思い出を書いたところがある。
それによると、漱石は授業の時間にも次々と妙な新しい単語を話したそうだ。「牛耳を取る」を「牛耳る」と言い、「野次を飛ばす」を「野次る」というぐあいに、おかしな言葉を作っていった。が、今はその言葉がすっかり定着している。 (p.211)
なお夏目先生は言葉を詰めて言う趣味(?)があった。例えば学校の向いの『梅月』という菓子屋へ甘いものを食いに行くことを「バイゲル」というたぐいである。多分野次馬を飛ぽすことを「ヤジル」と言ったり、仕事をリードすること(中国の語で「牛耳を取る」という)を「牛耳る」などいう語も夏目先生の新造語だと聞いている。
p.203